空間を写すという行為は、単に写真を撮ることではありません。
建築の意図を汲み取り、光や構造を正しく伝えること。しかし、依頼者によって「写真の正解」は異なります。
これは長年撮影を重ねる中で強く感じてきたことです。
今回はその違いを整理してみたいと思います。
建築家・設計士が求める写真
建築家が写真に求めるのは、美しさそのものよりも「設計意図の伝達」です。
光の方向、構造の秩序、素材の関係。
それらを正確に記録することで、図面や模型では伝わらない「思想」が浮かび上がります。
ハウスメーカーが求める写真
ハウスメーカーの撮影では、求められる方向性が少し異なります。
ここで重視されるのは、「広さ」「明るさ」「清潔感」といった、見る人の安心感につながる要素です。
つまり、空間の心地よさをどう感じてもらうかが大切になります。
中古・再販物件の撮影
中古物件では、超広角レンズの効果が明確に現れます。
限られた空間をできるだけ広く見せ、居心地の良さを感じられるように整える。
住まいとしての印象を大切にしつつ、間取りや空間の情報をわかりやすく伝えることを意識しています。
施主・オーナーからの依頼
施主さまからの依頼では、建築の意図だけでなく、実際に暮らす人の目線が重視されます。
光や空間の広がりを意識しながらも、家具や暮らしの気配を含め、日常の雰囲気を伝える写真が喜ばれます。
また、こうしたご依頼は、暮らし手の視点を共有できる点に大きな魅力があり、撮影者としても心に残る仕事となります。
目的によって変わる「見せ方」
建築写真と不動産写真。同じ空間でも、撮影の目的によって「正解」がまったく異なります。
建築写真とは、その視点の違いを可視化する営みであると考えます。