建築撮影などでよく使われる『TS-E17mm F4L』。
その特徴のひとつが「大きなイメージサークル」を持つことです。
TS-E17mmでシフト操作を行わず撮影するとき、
カメラのセンサー(36mm幅)は、レンズが描く像の中心部分だけを切り取っています。
一方、シフト撮影では、レンズが結ぶ像(=イメージサークルの結像)を、
センサー面の上で上下・左右に移動させることができます。
このレンズのシフト量は最大±12mm。
言い換えれば、像をセンサー上で最大12mmずつ動かしてもケラれない、それだけの「結像範囲の余裕」があるということです。
構造的には、一回り広いレンズで写した像の中から、必要な部分だけを切り取って使っているようなものです。
では、実際にどれほどの「画角の余裕」があるのでしょうか。
イメージサークルとシフト量
このレンズが持つイメージサークルの直径を求めるには、
「像を最も外側までずらすことができる横方向のシフト(±12mm)」で検証するのが適しています。
上下方向は結像面の端まで達しないため、基準としては適しません。
像を左右に最大12mmずつ移動させることができるため、
センサーがカバーできる全体の横幅は次のようになります。
36mm(元の幅)+ 12mm(左シフト)+ 12mm(右シフト)= 60mm
※レンズ群のシフト量と、センサー上での像面移動量は必ず一致します。
つまり、レンズが描く像のうち、横幅60mm分の範囲をセンサーがカバーできるわけです。
シフトを行わない撮影(シフト量0)では、その中央36mmだけを使っていることになります。
言い換えれば、カメラは「ひと回り大きなイメージサークル」の中から、中心部分のみを物理的にトリミングしている状態です。
シフト合成後の画角
画角(写る範囲の広さ)は、センサーの幅に比例し、焦点距離に反比例します。
この関係をそのまま式にすると:
等価焦点距離(フルサイズ換算での広さ)
= 実焦点距離 ×(センサー幅 ÷ スティッチ後の幅)
= 17 × (36 ÷ 60)
= 17 × 0.6
= 約10.2mm
つまり、TS-E17mmを左右いっぱい(±12mm)にシフトしてスティッチすると、
写る範囲(横方向)は「フルサイズカメラで10.2mmのレンズを使った場合」とほぼ同等の超広角になります。
まとめ
センサーがカバーする横幅が36mmから60mmに広がることで、
写る範囲はシフト操作により約1.67倍(60÷36)広くなります。
焦点距離はその逆数(約0.6倍)に換算されるため、
17mm × 0.6 ≒ 10.2mm相当の広がりになる、というわけです。
なお、横位置で撮影する場合、縦方向(上下シフト)はセンサーの短辺(24mm)に対して余裕が大きいため、
実際には横方向(左右シフト)に比べて光量低下や像の流れが出にくい傾向があります。
※センサーが横長(36mm×24mm)であり、縦方向は横方向よりも余裕が生じるため。
どうしても引きが取れない場合などは、逆光耐性や動体要素、機動性を考慮し、
TS-E17mm(最大シフト)からのスティッチングではなく、Heliar 10mmを選択することも多いです。
なお、このレンズ(TS-E17mm)は、シフト量±12mmでも公称イメージサークル(φ67.2mm)をまだ使い切っていません。
理論上、横方向シフト±12mmでセンサーがちょうどイメージサークルの端に達すると仮定した場合の必要径はφ64.6mm。
公称値との差(67.2−64.6=2.6mm)を両側で割ると、片側あたり約1.3mmのマージンが残されている計算です。
※この「片側」とは、横方向最大シフト時における、センサー端とイメージサークル端の間の余裕量を指します。
このように、結像範囲にかなりの余裕を持たせて設計されており、シフト限界近くでも比較的良好な描画を保ちます。
その懐の深さこそ、このレンズが長年にわたり建築撮影の定番として支持され続ける理由のひとつといえるでしょう。